コラム

2015-05-12
もらい事故で4000万円!!!

先日、もらい事故で4000万円の損害賠償の支払いを認める判決が出た、というニュースが世間を騒がせました。居眠り運転で対向車線を越えたA車が対向車Bと正面衝突をし、A車に同乗していた男性が亡くったという事故で、亡くなった男性の遺族が、対向車Bの運転手に4000万円の賠償を求めそれが認められたのです。えっ??まっすぐ走っていただけなのに?対向車線を越えてきたA車が悪いのに??という驚きの声が出るのは当然です。

 

このような違和感を感じる判決がなされた背景には次のような事情があります。

 

まず、対向車線を越えたA車側の任意保険の問題。A車が死亡した男性の所有で、家族以外の者が運転していた場合保険金が出ない契約となっていたことから、知人男性が運転していた今回の事故では損害賠償がされない状況であったこと。つまり、遺族に対する何らかの救済手段をみつける必要があったこと。

 

次に、自賠法(自動車損害賠償保障法)の問題。自賠法とは、自動車事故の被害者救済を目的として制定された法律ですが、この法律によると、運行供用者(運転者、所有者等)は、自分(所有者の場合には運転者)に過失のなかったことを証明できない限り責任を負わなければならないとされているのです。この場合、「過失があったかなかったわからない」では責任を回避することはできず、「なかったこと」を証明しなければなりません。「なかったこと」の証明は非常に困難なもので、今回、対向車B側で裁判所を納得させることができなかったのです。

 

この判決は地裁のもので、対向車B側が控訴したため、今後判決内容が変わる可能性はあります。しかし、もらい事故でも損害賠償を支払わなければならない場合があることを頭の片隅にでも置いておいてください。

 

弁護士 明司絵美

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