コラム

2014-01-14
性別変更した夫と子との父子関係

昨年(平成25年)12月10日、最高裁判所において興味深い判決が言い渡されました。性同一性障害で戸籍上の性別を女性から男性に変更した夫と、第三者からの人工授精で妻が出産した長男との間に、法律上の父子関係が認められたのです。

 
本件夫妻は、第三者の人工授精によって生まれた長男の出生届を提出しましたが、役所は夫を父親とは認めず、父の欄を空白とする戸籍を作りました。夫妻は、戸籍の訂正を求める裁判を起こしましたが、一審・二審とも、夫と長男の血縁関係が存在しないことが明らかである以上、父子関係は認められないとして、戸籍の訂正を認めませんでした。

 
これに対し、最高裁判所は、「妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する」という民法772条の規定を根拠に、夫と長男の父子関係を認めました。女性から男性に性別変更した者に女性との婚姻を認めながら、性的関係によってもうけた子でないことを理由に、嫡出(法律上の父子関係)の推定を認めないのは相当でないというのが主な理由です。

 

もっとも、5人中2名の裁判官が反対意見を述べており、裁判官の間でも意見の分かれる難しい問題です。近年、生殖医療の進歩により、体外受精や代理母による出産など新たな親子形態が増えており、そのような親子に法律上の親子関係を認めるかどうかについて、早急な法整備が求められます。

 

弁護士 船倉 亮慈

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